2017年8月12日土曜日

見えないものを見せる

「可視化」は、大学時代からの私の研究テーマの一つでした。建築空間の中で生活する人間の行動を予測する技術を開発したことが私の学位論文であり、まだ起きる先の人間の行動を予測してそれを建築空間上にプロットするという行動シミュレーションのモデルを提案するというものでした。これは災害時における建築物からの避難予測として現在では欠かせない技術となりましたが、それにしても「出入り口の前にたくさんの人が殺到する」とテキストで表現してもその受け取り方は人それぞれです。そこで計算した結果を実際の建築図面上に人間の投影図として表現し、その混雑具合を視覚的に見せることで一般の利用者にも分かりやすく表現することができました。

未来の生活空間もそうですが、まだ見えないもの、あるいは視覚としては捉えられないものを「見える」ようにする考え方や技術が可視化です。そこで、人間の暮らしの快適さを評価する感覚つまり五感を視覚化しようという試みを大学院の授業で何度も取り上げました。

視覚そのものでは、超高速で動くものをハイスピード撮影してゆっくり見せるとか、膨大な時間をかけて変化するものを数秒に縮めて見せるなども可視化の一つです。講義の課題としては視覚以外の感覚をビジュアル化することを試みました。キャンパス中庭の匂いを可視化する、赤ワイン・白ワイン・ロゼの味覚の違いを可視化する、建築素材の肌触りを言葉として可視化するなどなど、とてもユニークな表現がたくさん飛び出しました。その課題として取り上げられなかったのが聴覚の可視化です。

研究室の論文としては、視覚障害者がどのように音を認知しているのかを音の伝搬を球体の連続として可視化する試みは発表しましたが、講義の課題としてはやり残していました。つまり、音楽を可視化しようというものです。音楽を聴いて頭の中では様々なイメージをかきたてますが、それを目で見えるようにしようというわけです。今回は、その手始めとして音階の一つ一つに色を当てはめ、これを五線譜で表現された音の流れに対応させてみました。音符の長さが色の帯の幅に対応しています。

取り上げたのは「ムーンライトセレナーデ」ですが、♯や♭は無視しています。もちろん配色の仕方でそのイメージは違ってくると思いますが、一つの表現としての可視化の結果です。



音階と配色の関係は、仮に下記の図のように設定しました。



これによって、曲のイメージの違いが表現できたかどうかは、別の曲にも同じルールを当てはめてみないとわからないということで、もう一曲は沖縄で歌われている「てぃんさぐの花」を取り上げてみました。先ほどのムーンライトセレナーデと並べてみると、なんとなくそれぞれの曲を聴いた時の印象の違いが「見える」かなというところです。


2017年8月10日木曜日

写真で伝える

6年前に家内が動けなくなった時に「私の代わりにいっぱい写真を撮ってきて見せて」と言われたのをきっかけに、それまで建築の模型写真以外にはほとんどカメラでスナップ写真など撮ったことがなかったのですが、毎日一枚でもいいから身の回りのものや風景、出来事などに目を向けるようになりました。

家内がなくなるまで続けていたミクシィ(mixi)に代わって、私がフェイスブックに一日一枚を目標に写真と記事を投稿して家内への報告をしてきましたが、毎日相当な枚数の写真を撮るものの、そこに記録された映像と私がこれを撮りたいあるいは伝えたいと思ったものとが、かなり違うなぁとずっと思っていました。「パパって写真が下手ね」と家内が言っているのも聞こえます。

デジタル写真を「現像する」ことを知ったのはまだ2年ほど前です。時間のある時には少しコントラストを濃くしたり、暗い写真を明るくするぐらいのことはしていたのですが、フォトショップの機能やフィルタを使っているうちに、記録された映像が劇的に変化することもあることを実感しました。フォトショップによる画像編集の実例をいろいろ見ているうちに、撮影した現場で私が撮りたいと思っていたイメージに近いものを写真加工で引き出せることが分かったのです。それが現像ということでした。

アナログ写真の時代から、プロのカメラマンが自分で写真を現像する際に施していた操作が、今ではデジタルに処理できるようになっているばかりか、アナログでは得られないような効果を付加することも可能になっています。

ということを記録しておきたかったので、先日の白保の豊年祭で「みるくさま」の行列が登場する時に私がイメージした印象に近くなるように写真を現像してみました。私がこの場面で伝えたかったことは、夕方の西日を背中に受けて甲斐甲斐しくみるくさまに寄り添う二人の女の子の素朴な姿だったのです。撮った写真を家でモニタで見た時に、これは行列風景の説明写真であって、この女の子たちの息づかいのようなあの瞬間の私が受けた印象が全く伝わっていないことに愕然としたのです。


白保豊年祭2017(現像前)
そこで、トリミングしてサイズを調整、行列の先頭を明るく、そして逆光効果を強調して見たのが次の写真です。この現像を施すことで、私が現場で受けた印象に少しでも近づけたような気がします。まだほとんどの撮影をカメラのオート機能で撮っているうちは素人だと思いますが、それでも時間をかけて現像することで記録ではなくて「思い」を伝える写真に仕上げることはできるのではないかと思いました。

白保豊年祭2017(現像後)

2017年7月19日水曜日

沖縄は長寿県?

昨日、建築雑誌社から「建築と健康」についての取材を受けた時、健康寿命の話題になったのですが、来られた編集社の方はお二人とも日本で一番長寿なのは男女ともに沖縄県と答えていました。

私も、2000年に石垣島に家を建てた時にはそう思っていました。でもそれからしばらくして講義用の資料を作成している時に、すでに2000年には沖縄県の男性の平均寿命は全国の26番目だということを知ってかなりショックでした。さっと調べたところではその原因として色々なことが言われていました。「ファストフード店が沖縄にできたからだ」とか「離婚率がトップなので強いストレスがかかるからだ」などなどです。その頃に私が勘違いしていたのは、男女平均と間違えたのかもしれませんが、女性の順位も全国のトップテンに入っていないと昨日までずっと思っていました。

ところがです。しっかりした統計データで確認しようと厚生省のホームページから都道府県別の平均寿命の推移に関するデータをダウンロードしてみたら、なんと大きな間違いをしていたことに気がつきました。男性の平均寿命は確かに最悪の下降線をたどっていましたが、女性については沖縄県が返還されてからは常に一位だったのです。ただし5年ごとに行われる国勢調査から集計して発表されている最新(平成22年時点)の集計によれば、沖縄県は女性も3位に後退しています(表1)。


昭和40年からこの生命表が発表されていますが、沖縄県のデータが含まれるようになった1975年からほぼ5年ごとの平均寿命の都道府県別の順位の推移をグラフにしてみました。


これを見ると、女性に関しては2010年までは全国1位でした。しかし、男性は1985年の集計で一回だけ1位になったものの、その後は全国の半分程度、前回に至っては47都道府県中30位と順位を下げています。長野県が最近はずっと1位なのですが県をあげての食生活の改善の取り組みがあったことを聞くにつけ、沖縄県の男性の食生活の改善が急務であることが明らかです。散々飲んだ後、最後の締めにステーキを食べるなんていうのは沖縄県ぐらいでしょうね。

とはいうものの、推移の順位ではなくて平均寿命の数値だけ見れば、もちろん年々上がっているのは確かで、沖縄県以上に他の都道府県では健康に関する県をあげての取り組みが少しずつ功を奏しているのではないかと推測されます。私も、島野菜をせっせと摂るようにして平均寿命のランクアップに貢献しようと思います。



2017年5月29日月曜日

船越屋ハーリー忘備録

石垣島の北部にある伊原間は、島がくびれていて200mの幅しかありません。漁師が海に出るときに東風の時にはサバニ船を担いて西側の港まで、西風の時には逆に東側に船を担いで移動したことから「船越」という地名がつけられたのだそうです。その海岸に番屋が建てられそれらを含めてフナクヤー(船越屋)と言い、それがフナクヤーハーリーの海神祭の名前となりました。




海神祭はまず太平洋に当たる東海岸で御願ハーリーで海の安全と豊漁を祈願するところから始まります。



その後、陸揚げされたサバニを丸太に縛ってみんなで担ぎ、200mの幅を移動することになります。子供用のサバニも幼稚園児たちが担いで一緒に移動です。


西側にある伊原間漁港に着いたところで、中学生や一般、そして地区ごとの対抗レースが始まります。フナクヤーハーリーが他の各地と明らかに違うのが、この船越のプロセスがあることと、中学生や一般の方の体験乗船ができることのような気がします。




 今回の伊原間でのハーリーは、大人の競技よりも子どもたちが生き生きと参加している姿に感銘しました。「地域ぐるみで子どもを育てる」ことが日々の暮らしの中で行われていることを実感した今日の海神祭でした。







2017年4月28日金曜日

折り紙建築

故・茶谷正洋先生が東京工業大学の教授をされていた時に考案された「折り紙建築」は、当時、私が早稲田大学の建築図法の授業を担当していた時に取り入れたい課題の一つでした。カリキュラムの改訂のために実現はできませんでしたが、ずっと憧れていたところ江副育英会の奨学金の審査員を頼まれた時に一緒に審査を担当されていたのが茶谷先生でした。

10年ほど毎年審査会でお目にかかっていたのですが、ある時、「渡辺くん、こんなものを作ったからあげるよ」と言われてくださったのが、先生の直筆のサイン入りの折り紙建築で作った「横浜クイーンズタワー」とお台場の「フジテレビ社屋」でした。その後、私が大学を退職する時まで研究室の机の前に展示してありました。

横浜クイーンズタワー
フジテレビ

石垣子ども未来大学の課題を考えていた時に、真っ先にやってみたかったのが、この折り紙建築です。茶谷先生がこれを思いついたきっかけは年賀状の版画に飽きて、何か面白いことができないかと考えていた時に、賀正の「賀」の漢字をポップアップカード形式で立体的に作って写真に撮り、それを年賀状にしたところ評判が良かったので、それを建築物でやってみたらどうだろうというのが最初だったようです。

茶谷先生の直筆サイン


紙を「きる」そして「おる」ということの意味やプロセスを再現するために、私も一から始めてみました。たった一枚の平面の紙から無限の立体が生成できることを再認識し、キッズユニバーシティの一番の狙いである「自分で作って感動すること」には最も適した課題になると確信しました。平面図と立面図が一枚の紙に同時に存在し、さらに現実の建築空間をいかに抽象化してそれらしく見せるかという空間認識や空間把握がしっかり身につくような気がします。

一枚の紙から立体建築へ

さらに、ひたすら細かい線を切る、あるいは紙を線に沿って半分の厚さだけ切るという作業が、集中力や持続力を鍛えることができるし、折るという作業が指をバランスよく動かす必要があるので、子供だけではなくて高齢者にこそ楽しく指先と脳を鍛える訓練になるのではないかと思います。

たくさんの建築パーツに部材を分けて切り離し、それをボンドで貼りつけながら全体を作っていくという建築模型の作り方とは全く違う発想で、平面と立体との間を行き来できる「折り紙建築」は、無限の可能性があるような気がしています。茶谷先生から託された課題を、いま島の子どもたちと共有できることを感謝しています。

2017年4月9日日曜日

おる・つつむ

折型デザイン研究所の山口さんからいただいた研究報告「つつみ の ことわり」は、江戸中期に伊勢貞丈によって書かれた贈進の際の包みと結びの礼法「包の記」と「結の記」を現代風に読み解いた書物なのですが、礼儀作法としての我が国独特の「折り」のこころを、石垣島の子供未来大学で伝えられないかと試みています。


この中に、のし袋などについている「紙のし」の原型である熨斗鮑包に関する解説があります。その展開図と手順に従って自分で折ってみると、進物に熨斗鮑を添えることが江戸時代には一般化していて、それが形骸化といえども今日まで脈々と続いていることに日本人のこころの置き方の一端をみるような気がします。

伊勢貞丈の「包の記」には、こう書かれていると山口さんが現代語に解釈されました。
「熨斗鮑を包む事。当世の進物では、必ず魚鳥の類を添えるのが、祝の心を示すこととされている。魚鳥を添えない時は、干し肴あるいは熨斗鮑を、百本千本添える。略する時は、熨斗鮑二〜三本を切って、これを紙に包んで添える。(後半略)」とあり、その後、折り方の展開図と完成図が示され解説が書かれています。

矩形(1:√2)の対角線に正中して斜めに放射状に紙を折進んでいく時、神が紙の中に込められ、送る相手への思いと正面から向き合う気持ちにさせられ、礼法の深い意味合いを感じました。この熨斗鮑包の次には、手順は似ているものの、陰と陽の関係にある折型の木の花包みが解説されていて、一枚の白い紙を折ることで光と影がアートのように現れてくる美しさを堪能できました。

左が熨斗鮑包で、右が木の花包

2017年3月26日日曜日

小さな発見、大きながっかり

3月25日は昨年亡くなった母の一周忌のために浜松で法要を済ませました。浜松に帰った時には帰りに必ず浜名湖養鰻組合の地元のウナギで作ったお弁当を買って新幹線に乗るのですが、昨日は新宿の家で留守番をしているワンちゃんの具合が悪いので、できるだけ早く戻るためにそのままホームに駆け上がり、自笑亭の売店で毎日限定30食とおばさんが言った「うなぎ飯」を買って帰ってきました。



自笑亭といえば安政元年から160年以上の歴史のある食のお店で、浜松で駅弁といえば自笑亭と誰もが知っているお店でした。しかし、半世紀前に東京に出てきてからは新幹線の車内でお弁当を食べる機会もなく、ほぼ50年間は自笑亭の駅弁を食べていませんでした。久しぶりの「うなぎ飯」に期待を膨らませ、いつもストックしてある「肝吸い」を作り、どれどれと開けてみたのですが、見かけは値段相当のうなぎが乗っているのですが、なんとなく私が思っていたイメージとは違うのです。



一口食べてみました。それは私の記憶にある昔の「うなぎ飯」とは程遠い味でした。かなり昔の記憶が、その後、いろいろなところで食べたうな丼やうな重の味で書き換わっていたのかもしれません。あるいは車中で食べるとまた違った印象だったのかもしれませんが、タレも少なくご飯が固くて、これってうなぎ飯?というのが大きながっかりでした。

食べ終わって後片付けをしようとした時に、もう一度包装紙を眺めていて、ふと気づいたことがあります。これが小さな発見なのですが、なんとイラストのお侍さんや町人がIT化しているではありませんか、、、、、驚き!!おばさんがスマホで、うなぎをさらっていく猫を写メしているし、ベンチで休憩する武士が携帯を使い、もう一人はノートブックでお仕事をしている。ほぼ気がつかれないで捨てられてしまうであろう外紙に込めたこのセンスは抜群です。このセンスを駅弁の味にも注いで欲しかった、、。



2017年3月19日日曜日

風の通り道



石垣島に来てワンちゃんたちの散歩の時いつも感じることがあります。それは風のおしゃべり。遠くの方でざわざわと言ったかと思うとそれが急に近づいて来て、耳元でふぅっと肌を撫ぜて通り過ぎていく。それが、いつもだいたい決まった場所に来た時で、なんだかそこにけもの道のような風の通り道があるような気がしています。

それ以来、島に来て感じる風のことをいろいろ調べてみると、沖縄には随分たくさんの風にちなんだ言葉があることがわかりました。沖縄に限らず日本では様々な風に名前をつけていて2000以上もあることが、高橋 順子 (著), 佐藤 秀明 「風の名前」小学館に示されています。でもその由来については全て解説されているわけではなく、特に沖縄あるいは琉球に固有の風の名前については網羅されているわけではありませんでした。

そこで、これは自分で調べてみようと沖縄に関する文献を集めてみると、なかなか大変な作業になるなぁと諦めかけていたところに、すでに同じような趣旨で集められた「風」の話がまとめられた本があることが判明。しかしすでに廃刊になっていて、先日やっと古本の中から見つけネットで注文したものが今日届いたというわけです。

それが、三枝克之編著による「風に聞いた話 - 竜宮の記憶 -」角川書店です。


目次の後に最初に現れる言葉、それが「島にはいつも風が吹いている」という一文で、2010年に風の通り道というテーマでブログ(このhitoshigotoというブログとは別に)を書き始めた時に思っていたことを、見事に表現してくれていました。

しかも、この本は沖縄に特有の風の名前を解説的に取り上げるだけではなくて、風がいろいろな昔話や神話・伝説などを言い伝えられた通りに忠実に再現しているところが、とても興味をそそります。

例えば、今の季節の3月中旬であれば、低気圧や前線の関係で天気が急変することがあるのですが、それを旧暦に従って「二月風廻り(ニングァツィカジマーイ)」と呼ぶのですが、寒さの終わりを告げるこの春の嵐に聞いた話として、この風のために無人島に流れ着いた一隻の船にまつわる遠い昔の話が載っています。それがなんと「女性たちが月ごとに血を流すのは思いを遂げられぬまま死んだ犬の恨みなのだとか、、、、。」と、こんな具合に展開しているのです。

本を読まない私が、久しぶりに夢中になった嬉しい贈り物でした。

切る・折る

キッズユニバーシティのプログラムは、最初は「文字」つまりテキストという1次元の世界におけるクリエイティブを課題にしてきましたが、次回からは「点から線へそして面」へと思考を広げていこうと思っています。

そこで、まず「紙」を素材として、その「かたち」にどのような意味が込められているのかを実際に紙に触り、切り、折ることで実感することをテーマにします。日本の「折り紙」は今では世界中で「origami」として認知されているように、そこには形を作る無限の可能性が秘められています。

次回は、まず古典的な日本の正方形の折り紙からはじめ、折り鶴のような基礎的な折り方を再確認し、折って畳むことによって「面」が多様に変化することをみんなで確かめようと思います。宇宙で広げるパネルやアンテナに応用されている「面をたたむ」を実践します。

その時に、正方形の持っている形の特性、特に日本の美の中でそれがいかに大切に扱われ、その対角線が√2であること、それが西洋の動的な美しさと言われている黄金比ではなくて、日本の静的な美を形作った白銀比であることを実例から確かめるワークショップも行おうと思っています。それが、日本のハガキのサイズであり、またA4の紙のサイズが白銀比で正方形が元になっていることを手を動かすことで気づいてもらう課題を考えました。

その上で、「面」という2次元の世界は、面を切ったり、折ったり、組み合わせることで3次元の立体的な空間を形づくる課題作りに挑戦しています。まずはオランダのペーパーデザイナーであるPeter Dahmenさんの作品をトレースすることから始めますが、これを子どもたちが作業できる形にどのように持っていくか思案しています。


実際にこのデザインを自分で作ってみると、3次元の空間を構成した部材を全て平面状に展開すると無駄のない合理的な平面に置き換えることができることを知って、2次元から3次元の世界にあるいはその逆の形を作る発想が、これからの省資源でサスティナブルな空間づくりのヒントがたくさん含まれていることを実感しました。

このキッズユニバーシティでも最終的には、茶谷先生の「折り紙建築」をみんなで作ってみるところまで行きたいなぁと思っていますが、4月まで一ヶ月いろいろ試行してみます。


2017年3月11日土曜日

香りの記号学

在職中から空間と「五感」の関係は大きな研究テーマでした。視覚的なアプローチが多き建築計画学の中で、それ以外の感覚、つまり味覚、嗅覚、聴覚、触覚と建築空間あるいは生活との関係を明らかにしたい、さらにそこから得られた成果を空間デザインに反映したいというのが一つの研究テーマでした。

人間が本来持っている「感覚」に頼らなくても暮らすことができる新しい技術の開発あるいはサービスによって、便利さや効率は良くなったものの暮らしの質という点からは失われたものも多いのではないかと、いろいろな試行錯誤を行なって卒業論文などでその糸口も見つかりましたが、まだまだ十分ではなく退職後もなんとかそれを実践できないか探っていました。

石垣島でのキッズユニバーシティを構想する中で、子どもたちとのワークショップを通してそれが実現できないかと考え模索していたところ、いろいろな人との出会いの中から少し先が見えてきました。そして、五感の中でも「嗅覚」についての世界的なアーティストが石垣島におられることを紹介していただき、今日、お会いすることができました。

お話を伺った直後から、「香り」そのものではなくて、人間がそれとどのように出会い、それを理解し、自分の記憶と照らし合わせながら記憶するかというプロセスが大切であることを説明していただき、それをずっと追い求めて実践されている姿に感動しました。その中で象徴的だったのが「香りの記号化」ということで、人間の情報処理の一つとして「香り」や「匂い」を取り上げることで、それが空間とも結びつき、アートとして表現できることが可能であることを教えていただきました。

香りによる人間の行動誘導は私の在職中から求めていたものでしたが、すでにそれをインスタレーションとして実践されていて大きなヒントを得ることができました。これを今後のキッズユニバーシティのワークショップとして実践するためのいくつかのアイディアが次々と湧いてきましたが、これを機会あるごとにディスカッションして、いつか課題として展開してみたいと思っています。

久しぶりに頭の中を衝撃的な光が飛び交ったような素敵な一日でした。いずれこのブログで嗅覚アーティストである上田さんの考えから学んだことを紹介していきたいと思っています。

2017年3月6日月曜日

もう一度開催

キッズユニバーシティの第一回目のワークショップを開催した直後に、私も参加したかったとのリクエストがたくさんあったので、昨日もう一度開催することになりました。テーマは同じく「脳をたがやす」ということで、やはりブレーンストーミングで頭を柔らかくするというワークショップでした。

昨日は中高校生が主でしたが、お母様とスタッフも加わってちょっと大人な雰囲気の8名でスタート。しかもNeiギャラリーのお二人も参観に来てくださり、和気藹々と進めることができました。




この日のブレーンストーミングの課題は、3月5日の「珊瑚の日」に合わせて、現在石垣島で深刻な問題になっている白化現象を取り上げ、「サンゴの白化を食い止めるには?」のアイディアをできるだけたくさん書き出すというものでした。

サンゴの白化現象の原因が地球温暖化だと気象のせいにする風潮が多い中で、やはり身近にこの問題に触れている子どもたちは、その原因の一つに海への赤土の流出やゴミの廃棄といった人間側の要因があることをしっかりグルーピングできていることに関心しました。さらにマイナスを指摘するだけではなくて現代の科学技術を使って、適切な台風を発生させて海水を攪拌して海水温を下げることや汚染や温暖化に強い種の開発や再生技術の導入などプラス思考のまとめができているなど、ブレーンストーミングによる成果がいくつも得られたことは大きな成果だったと思います。

でも、みんな昨日が「サンゴの日」だから、この出題だって知っていたのかなぁ?

その後は、前回の「重い」の反対語の「軽い」をブレーンストーミングして、そのグルーピングの中から一番お気に入りの内容を「絵」や「アイコン」で表現するという言語をイメージ化する課題に取り組み、これもびっくりするようなアイディアが飛び出して、このワークショップの意義を感じることができた一日でした。次回は、4月下旬ですね。



しかも昨日は、将来は石垣島出身のご主人と一緒に島に戻って、やはりワークショップなど教育関係のお仕事をされたいという女性との出会いもあって、できればこのキッズユニバーシティや同時に進めている「しまのようちえん」プロジェクトなどで一緒に活動できたらいいねということになり、さらに素敵な課題の実現のためのアドバイスもいただき、ますます今後の展開が楽しみになって来ました。

2017年3月4日土曜日

良くついてきてくれました



今日は、石垣こども未来大学の第2回目のワークショップを開催しました。

今日のテーマは、「文字をデザインする」ということで、カタカナフォントをみんなで作ってみました。こちらが与えたテンプレートを元に、そこにアレンジしてカタカナ48文字を新たにデザインし、そのフォントを使って自分の名前を書いてみるというのが一つ目の課題です。



これだけでも90分たっぷり時間がかかる内容なのですが、今日はさらに欲張って二つ目のカタカナデザインにも挑戦しました。それは、パズルなどで良く使う「タングラム」でカタカナを形作るというものです。日本では清少納言の知恵の板という遊びが当時流行っていたそうで、その知恵の板を折り紙に転写して、それを用いて自分の名前をデザインしました。




小学校1年生から高校1年生までの混成チームですが、お互いに助け合ったり、分け合ったりしてなんとか今日の作品は出来上がりました。カッターと定規でまっすぐ直線を切るのも怪しげな手つきの子もいましたが、今日の作業プロセスを通して、一つの問題に対していくつもの解があること、頭でなくて体で考えることが体感できたのではないかと思います。

それにしても、大学生とは違って、スライドの準備や教材の準備にもっと工夫がいることを痛感しました。しかし、大学院の授業でこれまでやってきたこととできるだけ同じ状態と内容で試みようとしているので、今日の結果を考察しながら取捨選択していこうと思います。

今回は設備が十分ではないので、全てアナログで試みましたが、本当はこれと同じことをデジタル環境でもやり、アニメーションなどの手法も加えながらダイナミックなフォントデザインもいずれ挑戦してみたいと思っています。

みんな、今日は長時間、良くついてきてくれました。ありがとう。

2017年3月3日金曜日

ラブちゃんが還ってきました


3月1日の未明に石垣島の家で亡くなったゴールデンレトリバーのラブちゃんですが、その後のことを忘れないようにメモしておきます。

ホームページを事前に検索したら、ペット専用の葬祭場が石垣島には2社あったのですぐに連絡したら、1社は昨年からペットの取り扱いをしなくなり、もう1社はいくら電話しても応答がありません。石垣市のページを見るとペットは燃えるゴミと一緒のビニール袋に入れてクリーンセンターに持っていくとあります。あまりのことに仰天してその後ネットなどで島の方がどう対処されたのかを見ていると、自宅の庭などに埋葬しない場合で火葬したい時にはどうやら沖縄本島にあるペット葬祭場に航空貨物として送っていることがわかりました。

そのためには航空機に搭載するために伝染病などにかかっていないかを証明する医師の死亡診断書が必要で、遺体を梱包して石垣空港の貨物専用の窓口に持ち込む時に提示することになっていました。ラブちゃんのかかりつけの獣医さんにお電話すると、特に大型犬の場合にはそうされる方が多いとのことで、沖縄本島にあるペット葬祭の会社も教えていただきました。

先方と電話で打ち合わせ、なんとか当日の便に間に合うように準備を始めたのですが、ラブちゃんを収める箱が見つかりません。島のお友達が漁港の知人に掛け合ってくださり、なんとか大きなダンボール箱を確保していただいたのですが、何しろ市街地から野底の自宅までは車で30分以上かかることと、車での運搬に大変なので困ってもう一度家中を探したところ、なんと27インチスクリーンのiMacを輸送した時の梱包材がそのまま残っていたのに気づきました。ほぼぴったりのサイズで無理なくラブちゃんを収めることができ、そのまま診断書をいただきに動物病院に寄り、空港へ。

最後に東京で身体検査をした半年前には30kgあった体重が、一週間何も食べなかったために24kgまで痩せていました。なのによく我慢していました。

那覇空港には夕方遅くの到着で、先方の方が引き取ってくださいましたが、遅いので翌日の3月2日に火葬ということになり、ほぼ半日で冷めたところで遺骨をまた石垣島まで送り返してくださることになりました。家内もそうでしたが、希望で粉骨して世界の海に散骨を望んでそのようにしてあげたので、ラブちゃんも粉骨してあげようと思い、東京の粉骨業者に連絡を取り手順を確認して、沖縄のペット葬祭社に連絡したところ、なんと粉骨装置も常備していて料金以内で粉骨した後に梱包して返送してくださることになりました。

そして、今日3月3日ひな祭りに間に合うように夕方ゆうパックで還って来ました。これまで160フライト以上しているラブちゃんにとっての最後のフライトになりました。その後、ママと一緒に祭壇に安置して、他の子たちの夕ご飯と一緒にひなあられやお水をあげてお祝いしてあげました。機会をみてママの元に送ってあげようと思います。

これだけ人間とペットの関係が大切になっているのに、石垣島に専用のペット葬祭場がないことはとても残念です。署名活動が以前行われたようですが、市の政策には反映されなかったようです。ペットの数がこれだけ増え、人間との関わりが濃くなっている時代なので、いのちあるものの終わり方については、もっと真剣に考える時が来ているのではないでしょうか。

2017年2月26日日曜日

脳をたがやせたかな

石垣島子ども未来大学の第一回のワークショップは、テーマが「脳をたがやす」でした。小学校一年生から高校一年生まで10人の子どもたちと一緒にトレーニングしました。大学では授業やゼミでやっていたのと全く同じ方法でブレーンストーミングとKJ法の実践です。

結論的には、頭の柔軟性というか自由さは大学生よりもずっと優れていることを実感したことです。練習と本番の2回実施したのですが、最初に練習で出した課題は、「島人の宝」を探せでした。みんなが石垣島に特有の大切なものつまり宝と思えるものをできるだけたくさん書き出すというものでしたが、予想としては観光ガイドブックに載っているような「サンゴ」や「アカショウビン」「川平湾」「カンムリワシ」などの自然を中心にした言葉が大半だろうと思っていたわけです。

ところがいわゆる観光地名などは一つもなく、その代わりに全く予想もしていなかった「オアヤケアカハチ」「エイサー」「豊年祭」などの芸能や伝統文化としてくくれるものがたくさんあったことと、「やさしい人」「フレンドリーな人」「世話好きなおばさん」など周りの人を島の宝だと思っていたというのが意外でした。やはり、島を外から見るのと内から毎日の暮らしを通して見るのとでは随分視点が違うことを再確認しました。
そしてこんなにやさしい心をこの子たちは持っているのを知って感激すると同時に、
思いつくものを自由に、これ以上出てこないまで絞り出すというブレーンストーミングが子どもたちの素直な頭をさらに柔軟にしてくれるのにも十分効果的であると思いました。


二つ目の出題は「重い」という言葉から思いつくものをできるだけたくさん書き出すというものでした。このブレーンストーミングの後でKJ法によりグルーピングし、まとまったグループの意味を考えながら「重い」とはどういうことか理解した後で、それを図化するというものでした。この図を内容の重いダンボール箱にはって世界共通のサインにしようと狙ったわけです。

結果として出された重いをイメージする絵やサインは、必ずしもデザイン的に優れたものという段階ではありませんが、このプロセスを体験することを通して「表現」して「伝える」ということの意味を理解していただけたのではないかと思います。

たくさんの気づきと感激のあったワークショップでした。

2017年2月24日金曜日

平面から立体へ

今日も終日小雨なので、家で明日から始まる石垣島の子ども未来大学の課題をあれこれ試作していました。

第一回:脳をたがやす(2017年2月)
第二回:文字をつくる(2017年3月)
第三回:紙をおる(2017年4月)
第四回:かたちを配置する(2017年5月)
第五回:かたちのルールを知る(2017年7月)
第六回:塔をつくる(2017年8月)
第七回:ドームをつくる(2017年9月)

明日の第一回はアイディアを絞り出すトレーニングとしてブレインストーミングを実施します。石垣島に関係するテーマを与えて思いつくままに、また連想するままにたくさんの言葉を採集しようと思います。それらをグループディスカッションしながらさらにアイディアを抽出すると同時に、KJ法によってグルーピングして問題を絞り込むというワークショップです。小学生にもできることを、そしてこの作業を通して自分が思いもよらなかったアイディアに到達することが目標です。

第二回目はオリジナルの文字をあるルールに基づいて新しくつくるフォントデザインです。そして今日考えていたのが第三回目の課題で、茶谷先生の折り紙建築をやってみようというわけですが、いきなりだと難しいのでフォントデザインした平面の文字(カタカナ)を立体にするために、紙を「切る」「折る」ことで体験してみようと思っています。ここには、閉じる、開くという時間思考も入っているので、この課題あたりからキッズユニバーシティの特徴が少しずつ出てくるのではないかと思っています。

第四回はレイアウトと組み合わせ、第五回はフラクタルパターンの生成、第六回はパスタ建築、第七回は村上さんの「だれでもドーム」が実現できたらいいなぁという現段階での構想です。


あの名前

パンの袋の口を止めているプラスチック製の留め具って、なんていうのか知りたかったのですが、「バッグクロージャー」だそうです。確かに名前のまんまですが、アメリカで収穫したリンゴを袋詰めにする必要から生まれたものだそうで、日本ではクイック・ロック・ジャパン一社だけで製造していて、年間26億個も作られるのだそうです。
それにしてもあのプラスチック片の周囲の凸凹は要るの?と思ったら、どうやらこの小片が数千個つながってロール状になったものを自動包装機に取り付けるのですが、その際に切り離しやすくするための工夫なのだそうです。クロージャーの製造過程でできるだけゴミが出ないように考えた末に、この凸凹になったそうで、やはり形にはみんな意味があることを知りました。
日常見慣れているのに、名前がわからないものって案外たくさんありそうですね。私はパソコン周りのコード類の見分けがつくように名前ラベルとして活用しています。


2017年2月22日水曜日

組み合わせ

大学の学生時代に初めて大型計算機でプログラミングをした時に出された課題が、「500円を硬貨だけで払うとしたらどれだけの組み合わせがあるか全て答える」というものでした。FORTRAN言語でなんとか解くことができましたが、これを設計に応用できないかと考えたのが、住宅地の一つの区画の中にL型のプランの住宅を4件配置するとしたら、どれだけの組み合わせが考えられるだろうかということでした。

これをコンピュータを使わないで人力で解くとしたら、どれほどの解が出てくるかを石垣島の子ども未来大学のワークショップでやってみようと試行錯誤しているところです。より少ない要素の組み合わせで、多数の解があることを体験してもらおうというわけです。本来なら大学のレベルでやり、その解を導き出すプロセスのアルゴリズムを考えさせて、これをコンピュータで解くというものです。それを遊び感覚で子どもたちにも体験してもらおうと思っています。

これは夏のワークショップの課題なので、これからじっくり手順や道具などを考えようと思っています。


2017年2月20日月曜日

ロゴを作ってみた

石垣島で新しく展開しようとしている「石垣島子ども未来大学」、つまり未来を担う子どもたちにクリエイティブな場を提供しようという試みなのですが、そのロゴを考えていたら、ちょっと面白い発見があって一人で嬉しくなりました。

この、キッズユニバーシティは、英語表記で「Ishigaki Creative Kids University」としたので、その頭文字をとって、ICKUの4つのアルファベットでロゴを構成しようと思ったわけです。そこでKeynoteアプリでテキスト入力をして、その文字全体の枠をどんどん狭めていったら、次々に4つのアルファベットの構成が縦方向に並び始めたのですが、これがそのままロゴとして使えるではありませんか。

文字と色のイメージが同じなので、使う場面に応じて横タイプだったり、四角だったり、縦に並んだタイプだったり、自由に使い分けができるし、何よりこれがjpegのイメージではなくてテキストだというところが手軽で、大きさもフォントサイズを変えるだけで可能なのです。画像のようにその度にドット数を合わせたり位置合わせをする苦労もなく自在に選択できる自由度があることを今更発見したということでメモしました。


記号?マーク?サイン?



段ボール箱に描かれている注意書きには、日本語で「取扱注意」や「水濡れ注意」と示されているものもありますが、これでは日本語のわかる人にしか通じない注意だなと思っていましたが、配送会社の段ボール箱には「絵」によって取り扱いにあたっての注意事項が示されるようになりました。

実は、今週末に第一回を開催する予定の石垣島子ども未来大学の最初のワークショップの課題のテーマが、テキスト(1次元)を絵(2次元)にするというものなのですが、その内容を考えているうちに、この段ボール箱に行き着いたわけです。

さて、この段ボールに描かれた記号のことをなんと呼ぶのかがわからなくて、随分検索しているうちに、どうやら「ケアマーク」と一般に呼ばれていることがわかりました。アイコンとは違うのかなとか、サインの一種ではないのかとか、いろいろ思い巡らせたのですが、どうやらこれはマークのようです。では一体、これらの表現の違いは何なのかはっきりした定義はないようなのですが、どなたか、分かりますか?

ちなみに、C.S. パースという記号学者は記号をicon/index/symbolの三つに分類しているようです。


2017年2月18日土曜日

時間をおいてみる

「空間における人間の行動特性の研究」が、私の早稲田大学での半世紀の研究テーマでした。卒業論文で遊園地における観客の行動を追跡したのが最初のアプローチでした。当時の研究室のキャッチフレーズは「人間−空間系の研究」という名称でしたが、実は研究を始めた当初から「時間」も重要な要素でした。この3つの「間」を通して人間の暮らしや行動を見ていくことを念頭に研究を進めて来たわけですが、実は、この「時間」に必ず着目して調査分析をして来たことが、我々の研究グループの最大の特徴となっています。

人間の生活の履歴という比較的長いスパンもそうですが、ほんの少し前にどこにいたのかそしてちょっと先にはどこで何をしているのかを予測すること、それを科学的に説明できるようにして来た研究が、学会でも評価されて、その成果は群衆が集まる博覧会場の観客動線計画や不特定多数が集まる施設からの避難計画などに生かされてきました。

そのせいか、日常でも何かを観察したり、ものを判断するのに時間的な要素が気になります。日・月による変化や季節による特性の変化には特に興味があって、生き物の誕生から土に還るまでの全てのプロセスに関心があるのです。

今日は、その一つを発見して嬉しくなりました。前回、今年のお正月に家の近くで見つけたリュウキュウツチトリモチという、キノコのような寄生植物です。これまでもピンク色の可愛い丸い帽子のような姿は何度か見たことがあるのですが、これがこのあと一体どんな姿になるのだろうかにとても興味があったのですが、今回初めてその姿を見ることができました。例えば、雄花の花被は四枚で、成熟後に反り返るなどです。(写真右側が一ヶ月前の同じ場所で撮影)

物事は、ある一瞬の事象だけではなくて、時間をおいて見ることで、初めて全容がわかるというのは、この生き物の成長だけではなくて、社会現象の全てに言えることではないでしょうか?

2017年2月17日金曜日

循環


昨年の秋に、浜松の実家に生えていた杉苔?のようなものを持ち帰って、ガラス瓶に入れ密閉してそのまま放置しておいたのですが、当時与えた水分だけで、未だに緑色の新しい芽が出たり、ガラス瓶の内側には水滴がついていたりします。空気の入れ替えも水分補給もしないのに、この小さな宇宙の中で命がつながっているのかと思うとちょっと感激です。正月に一ヶ月ほど日光の当たらない室内に置いていたらかなり茶色く変色してしまったのですが、その後、日中は窓辺の太陽の当たるところに置いてみたら、見事に再生しました。水分と酸素と二酸化炭素がうまく循環しているのでしょうか?このガラスのシリンダーに入った「苔」の宇宙を空間デザインの中にうまく取り込めないものでしょうか?

2017年2月16日木曜日

大学入学試験


今日は早稲田大学の理工系学部の入学試験日です。10年ほど前から、従来の理工学部は、基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部の3つに再編されましたが、入学試験は共通の出題で今日行われます。早稲田大学の全学部の入学志願者は114,983人ですが、募集人員は5550人なので約20倍の競争率です。

建築学科は創造理工学部に属していますが、募集人員80名に対して今年は1014名の志願者があり12.7倍の競争率となりました。建築学科だけは今日の一般入試試験の他に明日「空間表現」という実技試験があって、この点数が加算されて合否が判定されます。建築学科の定員は160人ですが、半分の80人はすでに各種推薦入学で合格者が決定しています。この中にはAO入試も含まれています。

何十年もこの入学試験会場で終日監督をしながら思うことですが、答えが一つしかない受験勉強をしなくては大学には入れないという制度そのものの見直しがどうして進まないのだろうということです。社会に出れば、問題の解は無数にあって、あるいはそれまでにない答えを自分で作り出していかなくてはならないのに、単に入学者をふるいにかけるためだけの受験勉強を強いられることへの疑問がいつもあります。幸い建築学科だけが実施している創成入試つまりAO入試の制度を積極的に活用すべきだと思うのです。

AO入試の長所短所はありますが、少なくとも建築学科での成績や卒業後の活躍を見ていると、明らかな成果が生まれています。志願者全員を一人一人を面接するのは大変ですが、ほとんど何もしないで一日中試験会場で歩き回って試験監督をしているよりは、ずっと前向きな対応だと思います。

大学の意識改革を提言しても何も変えることができなかったので、逆に子供達が小さいうちに「答えは一つではない」をワークショップを通して実践しようというのが、石垣島の子供大学です。一つ一つできるところから手をつけていこうと思います。

2017年2月15日水曜日

SNSのトレンドは?


フェイスブックに代わる新しいSNSをいろいろ探っているのですが、どうにもヒットアプリがありません。そこでJK(女子高生)に聞いてみたら、なんとsnapchatだというではありませんか?

なぜとの問いに「フェイスブックは親とも繋がっているので変な画像は投稿できないけど、snapchatなら設定した閲覧時間を過ぎると消えてしまうから、その場でお友達と盛り上がれる」のだそうです。そのために静止画にも動画にも色々なフィルターが用意されていて楽しめるようです。まだお相手がいないので私が自分では試せませんが、世間の余計なことを考えずに「いま」を楽しむというのもありかな、、、。

でも、このスマートフォン専用の画像共有アプリは10代から20代を中心にユーザーが増えており、ちょっと見逃せないSNSになるかもしれません。現在は、生まれたばかりでまだまだ問題もあるアプリですが、今後の動きを見守りたいと思います。

公式サイト
https://www.snapchat.com/l/ja-jp/download

2017年2月14日火曜日

産霊(むすひ)



昨年の大ヒット映画「君の名は。」でも核となっている「むすび」あるいは「むすひ」は、神道における観念で、産霊の字が宛られるように万物を産み成長させる神秘的で霊妙な力を表しているのだそうです。

古事記では、高天原に最初に現れた天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)に次いで、高御産巣日神(タカミムスビノカミ)が登場し、三番目に神産巣日神(カミムスビノカミ)が生まれたとされています。日本書紀では神皇産霊尊と表記される三番目の神様だけが女性であり、一般には男女の仲をとりもつ縁結びの神と言われています。

諸説あるようですが、ゆるく理解するととても面白い世界です。このように、神社と結びとは深い関係にあって、お守り袋などに見られるように、物の結び目にも神が宿ると捉えられているようです。その「結び目」にとてもたくさんの種類と意味が込められていることを知って、自分でも実際に結んでみようというわけで、今回は「二重に願い事が叶う」と言われている二重叶結びに挑戦しました。

こま結びと蝶々結びしか知らなかった私にとっては未知の世界です。表から見ると口の字に裏から見ると十文字に見えるところから「叶」結びという名前になったようですが、他のことを忘れてひたすら結ぶプロセスに集中できることが素晴らしいと思いました。この「結び」の観念を空間の繋がりや人の出会いの場のデザインに積極的に導入することで日本独特の神が宿る空間設計ができるのではないかと思いました。