そのようなシステムや潜在的な構造、あるいはまだ現実の世界には存在しない将来の予測を視覚的に「見せる」ことで、その物の理解ができることだけではなく、他社とのより正確なコミュニケーションを実現することができる。
建築の世界における「図面」や「模型」も、まだ実際には建っていない施設のイメージを平面的に、あるいは縮尺を伴う立体として「見える」形にすることで、設計者相互に、また施主と、さらに建設現場での工事関係者に共通の理解を、事前に得ることができる。
と、これまで私は説明してきたが、歴史を紐解くなどと大げさなことを言うまでもなく、建築以外の他の分野でも当然のことながら「見えないものを見せる」さまざまな取り組みが行われていた。
そのひとつが、人間の体の中を「見る」ことで、レントゲン、つまりX線撮影は、MRIやCTなどの新しい機器が採用されるようになったとは言え、まだまだ活躍している透視技術である。
なぜ、こんなことを書き始めたかを、最初に説明しておかなければいけないと、ここまで書いて気がついた。
じつは、先日、我慢できないほどの痛みに耐えかね、以前から処置するように言われていた「親知らず」を抜いたのである。
複雑に骨の中に埋まっている、この問題の奥歯を抜くためには相当のリスクを伴うので、大学病院の口腔外科に行くように言われていたのだが、いつの間にかその機会を逸して、今回の歯科クリニックでの緊急手術となった。
最初の麻酔も切れてしまうほどの2時間弱にも及ぶ格闘の末、何とか抜くというより、粉砕して取り除いたのだが、痛くて先生(私のお勧めの名医です)の経過説明もうろ覚えなのに、一枚のレントゲン写真を見せてもらって、すべて納得できた。
親知らずの根っこが骨の中で逆円錐形に広がっていること、一本前のすでに治療してある歯に食い込むような形で居座っていたことなど、素人にも明瞭に読み取ることができた。もちろん、無理を承知でお願いして、何とかこの画像をいただくことができた。口の中をいくら鏡で覗いても「見えない」状況が、よく「見える」。
注)投稿後、数年経って写真が消えてしまいました。