われわれはデザインに要求される性能を表現するのに、グラフで表現された「ダイアグラム」を用いることがあるが、これを設計者に示すときには、その使い方を十分に説明する必要がある。
われわれがダイアグラムを描くときに、ノードの大きさを変えることがある。大きなノードは、その空間の面積を大きくしなくてはならないということではない。その空間での行動の多様性、行動の重要性が大きいことを示しているのである。
われわれがダイアグラムを描くときに、リンクの長さや太さを変えることがある。短く太いリンクは、隣接する二つの空間ができるだけ緊密に近くにあるのが良いということではない。それらの空間の関係が重要であり、そこにデザインの時間を充分にかけたいという意思表示である。
われわれがダイアグラムを描くとき、それはあくまでもユーザーの個別の設計要求の図式化であり、機能・規模・配置については、何一つ語っていないことをデザイナーに告げなければならない。基本設計がグラフに抽象化されたものではないことを。
ひとつだけ間違いの例を示しておこう。通常、住宅のダイアグラムでは、道路と玄関などのエントランス機能の空間との間は、短く太いリンクで結ばれている。これを見たデザイナーの多くは、道路の近くに最も接近して「玄関」を設計してしまう。
自分の敷地外の公共空間から個人の限定された空間である敷地に入り、室内空間への接点であるエントランスまでの関係は、心をスイッチさせる最も重要な空間であるにもかかわらず、そこを経過する時間がほとんどないままに道路と玄関扉とが直結している場合がほとんどである。
敷地境界と建物の間には一定の空間を空けなくてはいけないが、これを上手くデザインして一番奥にエントランス空間を持ってきてはいけないのだろうか?このアプローチの長さは、毎日のストレスの調整機能を果たす空間になり得るのに。
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