2017年3月11日土曜日

香りの記号学

在職中から空間と「五感」の関係は大きな研究テーマでした。視覚的なアプローチが多き建築計画学の中で、それ以外の感覚、つまり味覚、嗅覚、聴覚、触覚と建築空間あるいは生活との関係を明らかにしたい、さらにそこから得られた成果を空間デザインに反映したいというのが一つの研究テーマでした。

人間が本来持っている「感覚」に頼らなくても暮らすことができる新しい技術の開発あるいはサービスによって、便利さや効率は良くなったものの暮らしの質という点からは失われたものも多いのではないかと、いろいろな試行錯誤を行なって卒業論文などでその糸口も見つかりましたが、まだまだ十分ではなく退職後もなんとかそれを実践できないか探っていました。

石垣島でのキッズユニバーシティを構想する中で、子どもたちとのワークショップを通してそれが実現できないかと考え模索していたところ、いろいろな人との出会いの中から少し先が見えてきました。そして、五感の中でも「嗅覚」についての世界的なアーティストが石垣島におられることを紹介していただき、今日、お会いすることができました。

お話を伺った直後から、「香り」そのものではなくて、人間がそれとどのように出会い、それを理解し、自分の記憶と照らし合わせながら記憶するかというプロセスが大切であることを説明していただき、それをずっと追い求めて実践されている姿に感動しました。その中で象徴的だったのが「香りの記号化」ということで、人間の情報処理の一つとして「香り」や「匂い」を取り上げることで、それが空間とも結びつき、アートとして表現できることが可能であることを教えていただきました。

香りによる人間の行動誘導は私の在職中から求めていたものでしたが、すでにそれをインスタレーションとして実践されていて大きなヒントを得ることができました。これを今後のキッズユニバーシティのワークショップとして実践するためのいくつかのアイディアが次々と湧いてきましたが、これを機会あるごとにディスカッションして、いつか課題として展開してみたいと思っています。

久しぶりに頭の中を衝撃的な光が飛び交ったような素敵な一日でした。いずれこのブログで嗅覚アーティストである上田さんの考えから学んだことを紹介していきたいと思っています。

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