2010年7月24日土曜日

集まる力

一点あるいは一箇所に、物理的・精神的な小さな力が「集まる」ことで、それぞれが持っていない多様な効果が発揮される。(集積効果?)

そのためには、どこに集めるのか、いつ集めるのか、どのような力を集めるのかをデザインしなくてはならない。そして、どのような効果が期待できるのか、そのビジョンを明らかにすることがプランニングやプログラミングの役割である。

一人の空間、二人の空間(対人距離)については、すでにたくさんの知識が得られている。最近の日本の平均世帯人数は2.55人だが、三人の空間についての研究は意外と行われていない。

世帯のような生活空間においては、三人という人間の行動の関係が、空間の評価に重要だというのは、このような現実の空間での統計的な頻度に加え、例えば、「歩く空間」においてもひとつのグループとして捉えられる最大の単位が三人程度ということからも明らかである。

まして、四人の空間についてはほぼ皆無だが、矩形で構成される居室空間の配置としては比較的考えやすいはず。

ここまでは比較的日常生活を通して考え易いが、さて、五人が集まる空間という哲学はあるのだろうか?形としての五角形には黄金比率が内包されているのだが。

この辺までが少数の集まりだとすると、それ以上はだんだん群衆力学になってくる。

2010年2月7日日曜日

再び「見えないものを見せる」

ものの仕組みや、ものが出来上がるプロセス、ものの使われ方など、視覚的に一瞬しただけでは分からないものを、位相的に示したり、ダイアグラムにしたり、時間の経過とともにアニメーションにすることによって、初めて理解できるということがずいぶんある。

そのようなシステムや潜在的な構造、あるいはまだ現実の世界には存在しない将来の予測を視覚的に「見せる」ことで、その物の理解ができることだけではなく、他社とのより正確なコミュニケーションを実現することができる。

建築の世界における「図面」や「模型」も、まだ実際には建っていない施設のイメージを平面的に、あるいは縮尺を伴う立体として「見える」形にすることで、設計者相互に、また施主と、さらに建設現場での工事関係者に共通の理解を、事前に得ることができる。

と、これまで私は説明してきたが、歴史を紐解くなどと大げさなことを言うまでもなく、建築以外の他の分野でも当然のことながら「見えないものを見せる」さまざまな取り組みが行われていた。

そのひとつが、人間の体の中を「見る」ことで、レントゲン、つまりX線撮影は、MRIやCTなどの新しい機器が採用されるようになったとは言え、まだまだ活躍している透視技術である。

なぜ、こんなことを書き始めたかを、最初に説明しておかなければいけないと、ここまで書いて気がついた。

じつは、先日、我慢できないほどの痛みに耐えかね、以前から処置するように言われていた「親知らず」を抜いたのである。

複雑に骨の中に埋まっている、この問題の奥歯を抜くためには相当のリスクを伴うので、大学病院の口腔外科に行くように言われていたのだが、いつの間にかその機会を逸して、今回の歯科クリニックでの緊急手術となった。

最初の麻酔も切れてしまうほどの2時間弱にも及ぶ格闘の末、何とか抜くというより、粉砕して取り除いたのだが、痛くて先生(私のお勧めの名医です)の経過説明もうろ覚えなのに、一枚のレントゲン写真を見せてもらって、すべて納得できた。

親知らずの根っこが骨の中で逆円錐形に広がっていること、一本前のすでに治療してある歯に食い込むような形で居座っていたことなど、素人にも明瞭に読み取ることができた。もちろん、無理を承知でお願いして、何とかこの画像をいただくことができた。口の中をいくら鏡で覗いても「見えない」状況が、よく「見える」。


注)投稿後、数年経って写真が消えてしまいました。

2010年1月11日月曜日

最初のCGアニメーション

設計プロセスの初期の段階で、その発想支援をする道具としてコンピュータが最初に用いられたのは1960年代初期であり、いわゆるCAD(Computer Aided Design)は、ここが出発点であるといえる。
それを可能にしたコンピュータ利用技術が、 CG (Computer Graphics)であり、世界的には『2001年宇宙の旅』にも参加したアメリカのジョン・ウィットニー(John Witney)が先駆者として評価され、1961年に制作した『カタログ(Catalog)』がその代表作とされている。
http://www.youtube.com/watch?v=TbV7loKp69s



我が国では1967年11月に第1回草月実験映画祭において、東大大学院都市工学科に在籍していた山田学と月尾嘉男によって発表された『風雅の技法』が日本初のCGアニメである。これは、大型コンピュータ制御のプロッタで描画した幾何学的な図形を一枚ずつフィルムに収めてアニメーションとしている。
作品の題名となった「風雅の技法」は、もちろんバッハの晩年の大作「フーガの技法」にヒントを得て作られたものであり、音楽分野では作曲技法として重要な対位法を映像の世界に持ち込もうという意図が伺える。フーガは対位法(kontrapunkt)のひとつであるが、複数のメロディーや映像を同時進行で展開するように構成する技法で、音楽や映像の芸術用語である。
http://www.youtube.com/watch?v=qC8ad4gVXEQ



その後、山田学は日本の建築界におけるCAD利用の推進者となり、我が国における万国博覧会の観客流動シミュレーションを実現している。1975年の沖縄国際博覧会以降のコンピュータによる観客流動モデルは、私との共同開発である。
一方、月尾嘉男は人工知能、仮想現実など情報科学の先端分野に挑戦するが、むしろ情報社会の基盤整備に力を注ぎ、大学からは最初の総務省総務審議官に就任し今日に至っている。