2017年3月26日日曜日

小さな発見、大きながっかり

3月25日は昨年亡くなった母の一周忌のために浜松で法要を済ませました。浜松に帰った時には帰りに必ず浜名湖養鰻組合の地元のウナギで作ったお弁当を買って新幹線に乗るのですが、昨日は新宿の家で留守番をしているワンちゃんの具合が悪いので、できるだけ早く戻るためにそのままホームに駆け上がり、自笑亭の売店で毎日限定30食とおばさんが言った「うなぎ飯」を買って帰ってきました。



自笑亭といえば安政元年から160年以上の歴史のある食のお店で、浜松で駅弁といえば自笑亭と誰もが知っているお店でした。しかし、半世紀前に東京に出てきてからは新幹線の車内でお弁当を食べる機会もなく、ほぼ50年間は自笑亭の駅弁を食べていませんでした。久しぶりの「うなぎ飯」に期待を膨らませ、いつもストックしてある「肝吸い」を作り、どれどれと開けてみたのですが、見かけは値段相当のうなぎが乗っているのですが、なんとなく私が思っていたイメージとは違うのです。



一口食べてみました。それは私の記憶にある昔の「うなぎ飯」とは程遠い味でした。かなり昔の記憶が、その後、いろいろなところで食べたうな丼やうな重の味で書き換わっていたのかもしれません。あるいは車中で食べるとまた違った印象だったのかもしれませんが、タレも少なくご飯が固くて、これってうなぎ飯?というのが大きながっかりでした。

食べ終わって後片付けをしようとした時に、もう一度包装紙を眺めていて、ふと気づいたことがあります。これが小さな発見なのですが、なんとイラストのお侍さんや町人がIT化しているではありませんか、、、、、驚き!!おばさんがスマホで、うなぎをさらっていく猫を写メしているし、ベンチで休憩する武士が携帯を使い、もう一人はノートブックでお仕事をしている。ほぼ気がつかれないで捨てられてしまうであろう外紙に込めたこのセンスは抜群です。このセンスを駅弁の味にも注いで欲しかった、、。



2017年3月19日日曜日

風の通り道



石垣島に来てワンちゃんたちの散歩の時いつも感じることがあります。それは風のおしゃべり。遠くの方でざわざわと言ったかと思うとそれが急に近づいて来て、耳元でふぅっと肌を撫ぜて通り過ぎていく。それが、いつもだいたい決まった場所に来た時で、なんだかそこにけもの道のような風の通り道があるような気がしています。

それ以来、島に来て感じる風のことをいろいろ調べてみると、沖縄には随分たくさんの風にちなんだ言葉があることがわかりました。沖縄に限らず日本では様々な風に名前をつけていて2000以上もあることが、高橋 順子 (著), 佐藤 秀明 「風の名前」小学館に示されています。でもその由来については全て解説されているわけではなく、特に沖縄あるいは琉球に固有の風の名前については網羅されているわけではありませんでした。

そこで、これは自分で調べてみようと沖縄に関する文献を集めてみると、なかなか大変な作業になるなぁと諦めかけていたところに、すでに同じような趣旨で集められた「風」の話がまとめられた本があることが判明。しかしすでに廃刊になっていて、先日やっと古本の中から見つけネットで注文したものが今日届いたというわけです。

それが、三枝克之編著による「風に聞いた話 - 竜宮の記憶 -」角川書店です。


目次の後に最初に現れる言葉、それが「島にはいつも風が吹いている」という一文で、2010年に風の通り道というテーマでブログ(このhitoshigotoというブログとは別に)を書き始めた時に思っていたことを、見事に表現してくれていました。

しかも、この本は沖縄に特有の風の名前を解説的に取り上げるだけではなくて、風がいろいろな昔話や神話・伝説などを言い伝えられた通りに忠実に再現しているところが、とても興味をそそります。

例えば、今の季節の3月中旬であれば、低気圧や前線の関係で天気が急変することがあるのですが、それを旧暦に従って「二月風廻り(ニングァツィカジマーイ)」と呼ぶのですが、寒さの終わりを告げるこの春の嵐に聞いた話として、この風のために無人島に流れ着いた一隻の船にまつわる遠い昔の話が載っています。それがなんと「女性たちが月ごとに血を流すのは思いを遂げられぬまま死んだ犬の恨みなのだとか、、、、。」と、こんな具合に展開しているのです。

本を読まない私が、久しぶりに夢中になった嬉しい贈り物でした。

切る・折る

キッズユニバーシティのプログラムは、最初は「文字」つまりテキストという1次元の世界におけるクリエイティブを課題にしてきましたが、次回からは「点から線へそして面」へと思考を広げていこうと思っています。

そこで、まず「紙」を素材として、その「かたち」にどのような意味が込められているのかを実際に紙に触り、切り、折ることで実感することをテーマにします。日本の「折り紙」は今では世界中で「origami」として認知されているように、そこには形を作る無限の可能性が秘められています。

次回は、まず古典的な日本の正方形の折り紙からはじめ、折り鶴のような基礎的な折り方を再確認し、折って畳むことによって「面」が多様に変化することをみんなで確かめようと思います。宇宙で広げるパネルやアンテナに応用されている「面をたたむ」を実践します。

その時に、正方形の持っている形の特性、特に日本の美の中でそれがいかに大切に扱われ、その対角線が√2であること、それが西洋の動的な美しさと言われている黄金比ではなくて、日本の静的な美を形作った白銀比であることを実例から確かめるワークショップも行おうと思っています。それが、日本のハガキのサイズであり、またA4の紙のサイズが白銀比で正方形が元になっていることを手を動かすことで気づいてもらう課題を考えました。

その上で、「面」という2次元の世界は、面を切ったり、折ったり、組み合わせることで3次元の立体的な空間を形づくる課題作りに挑戦しています。まずはオランダのペーパーデザイナーであるPeter Dahmenさんの作品をトレースすることから始めますが、これを子どもたちが作業できる形にどのように持っていくか思案しています。


実際にこのデザインを自分で作ってみると、3次元の空間を構成した部材を全て平面状に展開すると無駄のない合理的な平面に置き換えることができることを知って、2次元から3次元の世界にあるいはその逆の形を作る発想が、これからの省資源でサスティナブルな空間づくりのヒントがたくさん含まれていることを実感しました。

このキッズユニバーシティでも最終的には、茶谷先生の「折り紙建築」をみんなで作ってみるところまで行きたいなぁと思っていますが、4月まで一ヶ月いろいろ試行してみます。


2017年3月11日土曜日

香りの記号学

在職中から空間と「五感」の関係は大きな研究テーマでした。視覚的なアプローチが多き建築計画学の中で、それ以外の感覚、つまり味覚、嗅覚、聴覚、触覚と建築空間あるいは生活との関係を明らかにしたい、さらにそこから得られた成果を空間デザインに反映したいというのが一つの研究テーマでした。

人間が本来持っている「感覚」に頼らなくても暮らすことができる新しい技術の開発あるいはサービスによって、便利さや効率は良くなったものの暮らしの質という点からは失われたものも多いのではないかと、いろいろな試行錯誤を行なって卒業論文などでその糸口も見つかりましたが、まだまだ十分ではなく退職後もなんとかそれを実践できないか探っていました。

石垣島でのキッズユニバーシティを構想する中で、子どもたちとのワークショップを通してそれが実現できないかと考え模索していたところ、いろいろな人との出会いの中から少し先が見えてきました。そして、五感の中でも「嗅覚」についての世界的なアーティストが石垣島におられることを紹介していただき、今日、お会いすることができました。

お話を伺った直後から、「香り」そのものではなくて、人間がそれとどのように出会い、それを理解し、自分の記憶と照らし合わせながら記憶するかというプロセスが大切であることを説明していただき、それをずっと追い求めて実践されている姿に感動しました。その中で象徴的だったのが「香りの記号化」ということで、人間の情報処理の一つとして「香り」や「匂い」を取り上げることで、それが空間とも結びつき、アートとして表現できることが可能であることを教えていただきました。

香りによる人間の行動誘導は私の在職中から求めていたものでしたが、すでにそれをインスタレーションとして実践されていて大きなヒントを得ることができました。これを今後のキッズユニバーシティのワークショップとして実践するためのいくつかのアイディアが次々と湧いてきましたが、これを機会あるごとにディスカッションして、いつか課題として展開してみたいと思っています。

久しぶりに頭の中を衝撃的な光が飛び交ったような素敵な一日でした。いずれこのブログで嗅覚アーティストである上田さんの考えから学んだことを紹介していきたいと思っています。

2017年3月6日月曜日

もう一度開催

キッズユニバーシティの第一回目のワークショップを開催した直後に、私も参加したかったとのリクエストがたくさんあったので、昨日もう一度開催することになりました。テーマは同じく「脳をたがやす」ということで、やはりブレーンストーミングで頭を柔らかくするというワークショップでした。

昨日は中高校生が主でしたが、お母様とスタッフも加わってちょっと大人な雰囲気の8名でスタート。しかもNeiギャラリーのお二人も参観に来てくださり、和気藹々と進めることができました。




この日のブレーンストーミングの課題は、3月5日の「珊瑚の日」に合わせて、現在石垣島で深刻な問題になっている白化現象を取り上げ、「サンゴの白化を食い止めるには?」のアイディアをできるだけたくさん書き出すというものでした。

サンゴの白化現象の原因が地球温暖化だと気象のせいにする風潮が多い中で、やはり身近にこの問題に触れている子どもたちは、その原因の一つに海への赤土の流出やゴミの廃棄といった人間側の要因があることをしっかりグルーピングできていることに関心しました。さらにマイナスを指摘するだけではなくて現代の科学技術を使って、適切な台風を発生させて海水を攪拌して海水温を下げることや汚染や温暖化に強い種の開発や再生技術の導入などプラス思考のまとめができているなど、ブレーンストーミングによる成果がいくつも得られたことは大きな成果だったと思います。

でも、みんな昨日が「サンゴの日」だから、この出題だって知っていたのかなぁ?

その後は、前回の「重い」の反対語の「軽い」をブレーンストーミングして、そのグルーピングの中から一番お気に入りの内容を「絵」や「アイコン」で表現するという言語をイメージ化する課題に取り組み、これもびっくりするようなアイディアが飛び出して、このワークショップの意義を感じることができた一日でした。次回は、4月下旬ですね。



しかも昨日は、将来は石垣島出身のご主人と一緒に島に戻って、やはりワークショップなど教育関係のお仕事をされたいという女性との出会いもあって、できればこのキッズユニバーシティや同時に進めている「しまのようちえん」プロジェクトなどで一緒に活動できたらいいねということになり、さらに素敵な課題の実現のためのアドバイスもいただき、ますます今後の展開が楽しみになって来ました。

2017年3月4日土曜日

良くついてきてくれました



今日は、石垣こども未来大学の第2回目のワークショップを開催しました。

今日のテーマは、「文字をデザインする」ということで、カタカナフォントをみんなで作ってみました。こちらが与えたテンプレートを元に、そこにアレンジしてカタカナ48文字を新たにデザインし、そのフォントを使って自分の名前を書いてみるというのが一つ目の課題です。



これだけでも90分たっぷり時間がかかる内容なのですが、今日はさらに欲張って二つ目のカタカナデザインにも挑戦しました。それは、パズルなどで良く使う「タングラム」でカタカナを形作るというものです。日本では清少納言の知恵の板という遊びが当時流行っていたそうで、その知恵の板を折り紙に転写して、それを用いて自分の名前をデザインしました。




小学校1年生から高校1年生までの混成チームですが、お互いに助け合ったり、分け合ったりしてなんとか今日の作品は出来上がりました。カッターと定規でまっすぐ直線を切るのも怪しげな手つきの子もいましたが、今日の作業プロセスを通して、一つの問題に対していくつもの解があること、頭でなくて体で考えることが体感できたのではないかと思います。

それにしても、大学生とは違って、スライドの準備や教材の準備にもっと工夫がいることを痛感しました。しかし、大学院の授業でこれまでやってきたこととできるだけ同じ状態と内容で試みようとしているので、今日の結果を考察しながら取捨選択していこうと思います。

今回は設備が十分ではないので、全てアナログで試みましたが、本当はこれと同じことをデジタル環境でもやり、アニメーションなどの手法も加えながらダイナミックなフォントデザインもいずれ挑戦してみたいと思っています。

みんな、今日は長時間、良くついてきてくれました。ありがとう。

2017年3月3日金曜日

ラブちゃんが還ってきました


3月1日の未明に石垣島の家で亡くなったゴールデンレトリバーのラブちゃんですが、その後のことを忘れないようにメモしておきます。

ホームページを事前に検索したら、ペット専用の葬祭場が石垣島には2社あったのですぐに連絡したら、1社は昨年からペットの取り扱いをしなくなり、もう1社はいくら電話しても応答がありません。石垣市のページを見るとペットは燃えるゴミと一緒のビニール袋に入れてクリーンセンターに持っていくとあります。あまりのことに仰天してその後ネットなどで島の方がどう対処されたのかを見ていると、自宅の庭などに埋葬しない場合で火葬したい時にはどうやら沖縄本島にあるペット葬祭場に航空貨物として送っていることがわかりました。

そのためには航空機に搭載するために伝染病などにかかっていないかを証明する医師の死亡診断書が必要で、遺体を梱包して石垣空港の貨物専用の窓口に持ち込む時に提示することになっていました。ラブちゃんのかかりつけの獣医さんにお電話すると、特に大型犬の場合にはそうされる方が多いとのことで、沖縄本島にあるペット葬祭の会社も教えていただきました。

先方と電話で打ち合わせ、なんとか当日の便に間に合うように準備を始めたのですが、ラブちゃんを収める箱が見つかりません。島のお友達が漁港の知人に掛け合ってくださり、なんとか大きなダンボール箱を確保していただいたのですが、何しろ市街地から野底の自宅までは車で30分以上かかることと、車での運搬に大変なので困ってもう一度家中を探したところ、なんと27インチスクリーンのiMacを輸送した時の梱包材がそのまま残っていたのに気づきました。ほぼぴったりのサイズで無理なくラブちゃんを収めることができ、そのまま診断書をいただきに動物病院に寄り、空港へ。

最後に東京で身体検査をした半年前には30kgあった体重が、一週間何も食べなかったために24kgまで痩せていました。なのによく我慢していました。

那覇空港には夕方遅くの到着で、先方の方が引き取ってくださいましたが、遅いので翌日の3月2日に火葬ということになり、ほぼ半日で冷めたところで遺骨をまた石垣島まで送り返してくださることになりました。家内もそうでしたが、希望で粉骨して世界の海に散骨を望んでそのようにしてあげたので、ラブちゃんも粉骨してあげようと思い、東京の粉骨業者に連絡を取り手順を確認して、沖縄のペット葬祭社に連絡したところ、なんと粉骨装置も常備していて料金以内で粉骨した後に梱包して返送してくださることになりました。

そして、今日3月3日ひな祭りに間に合うように夕方ゆうパックで還って来ました。これまで160フライト以上しているラブちゃんにとっての最後のフライトになりました。その後、ママと一緒に祭壇に安置して、他の子たちの夕ご飯と一緒にひなあられやお水をあげてお祝いしてあげました。機会をみてママの元に送ってあげようと思います。

これだけ人間とペットの関係が大切になっているのに、石垣島に専用のペット葬祭場がないことはとても残念です。署名活動が以前行われたようですが、市の政策には反映されなかったようです。ペットの数がこれだけ増え、人間との関わりが濃くなっている時代なので、いのちあるものの終わり方については、もっと真剣に考える時が来ているのではないでしょうか。