2017年2月26日日曜日

脳をたがやせたかな

石垣島子ども未来大学の第一回のワークショップは、テーマが「脳をたがやす」でした。小学校一年生から高校一年生まで10人の子どもたちと一緒にトレーニングしました。大学では授業やゼミでやっていたのと全く同じ方法でブレーンストーミングとKJ法の実践です。

結論的には、頭の柔軟性というか自由さは大学生よりもずっと優れていることを実感したことです。練習と本番の2回実施したのですが、最初に練習で出した課題は、「島人の宝」を探せでした。みんなが石垣島に特有の大切なものつまり宝と思えるものをできるだけたくさん書き出すというものでしたが、予想としては観光ガイドブックに載っているような「サンゴ」や「アカショウビン」「川平湾」「カンムリワシ」などの自然を中心にした言葉が大半だろうと思っていたわけです。

ところがいわゆる観光地名などは一つもなく、その代わりに全く予想もしていなかった「オアヤケアカハチ」「エイサー」「豊年祭」などの芸能や伝統文化としてくくれるものがたくさんあったことと、「やさしい人」「フレンドリーな人」「世話好きなおばさん」など周りの人を島の宝だと思っていたというのが意外でした。やはり、島を外から見るのと内から毎日の暮らしを通して見るのとでは随分視点が違うことを再確認しました。
そしてこんなにやさしい心をこの子たちは持っているのを知って感激すると同時に、
思いつくものを自由に、これ以上出てこないまで絞り出すというブレーンストーミングが子どもたちの素直な頭をさらに柔軟にしてくれるのにも十分効果的であると思いました。


二つ目の出題は「重い」という言葉から思いつくものをできるだけたくさん書き出すというものでした。このブレーンストーミングの後でKJ法によりグルーピングし、まとまったグループの意味を考えながら「重い」とはどういうことか理解した後で、それを図化するというものでした。この図を内容の重いダンボール箱にはって世界共通のサインにしようと狙ったわけです。

結果として出された重いをイメージする絵やサインは、必ずしもデザイン的に優れたものという段階ではありませんが、このプロセスを体験することを通して「表現」して「伝える」ということの意味を理解していただけたのではないかと思います。

たくさんの気づきと感激のあったワークショップでした。

2017年2月24日金曜日

平面から立体へ

今日も終日小雨なので、家で明日から始まる石垣島の子ども未来大学の課題をあれこれ試作していました。

第一回:脳をたがやす(2017年2月)
第二回:文字をつくる(2017年3月)
第三回:紙をおる(2017年4月)
第四回:かたちを配置する(2017年5月)
第五回:かたちのルールを知る(2017年7月)
第六回:塔をつくる(2017年8月)
第七回:ドームをつくる(2017年9月)

明日の第一回はアイディアを絞り出すトレーニングとしてブレインストーミングを実施します。石垣島に関係するテーマを与えて思いつくままに、また連想するままにたくさんの言葉を採集しようと思います。それらをグループディスカッションしながらさらにアイディアを抽出すると同時に、KJ法によってグルーピングして問題を絞り込むというワークショップです。小学生にもできることを、そしてこの作業を通して自分が思いもよらなかったアイディアに到達することが目標です。

第二回目はオリジナルの文字をあるルールに基づいて新しくつくるフォントデザインです。そして今日考えていたのが第三回目の課題で、茶谷先生の折り紙建築をやってみようというわけですが、いきなりだと難しいのでフォントデザインした平面の文字(カタカナ)を立体にするために、紙を「切る」「折る」ことで体験してみようと思っています。ここには、閉じる、開くという時間思考も入っているので、この課題あたりからキッズユニバーシティの特徴が少しずつ出てくるのではないかと思っています。

第四回はレイアウトと組み合わせ、第五回はフラクタルパターンの生成、第六回はパスタ建築、第七回は村上さんの「だれでもドーム」が実現できたらいいなぁという現段階での構想です。


あの名前

パンの袋の口を止めているプラスチック製の留め具って、なんていうのか知りたかったのですが、「バッグクロージャー」だそうです。確かに名前のまんまですが、アメリカで収穫したリンゴを袋詰めにする必要から生まれたものだそうで、日本ではクイック・ロック・ジャパン一社だけで製造していて、年間26億個も作られるのだそうです。
それにしてもあのプラスチック片の周囲の凸凹は要るの?と思ったら、どうやらこの小片が数千個つながってロール状になったものを自動包装機に取り付けるのですが、その際に切り離しやすくするための工夫なのだそうです。クロージャーの製造過程でできるだけゴミが出ないように考えた末に、この凸凹になったそうで、やはり形にはみんな意味があることを知りました。
日常見慣れているのに、名前がわからないものって案外たくさんありそうですね。私はパソコン周りのコード類の見分けがつくように名前ラベルとして活用しています。


2017年2月22日水曜日

組み合わせ

大学の学生時代に初めて大型計算機でプログラミングをした時に出された課題が、「500円を硬貨だけで払うとしたらどれだけの組み合わせがあるか全て答える」というものでした。FORTRAN言語でなんとか解くことができましたが、これを設計に応用できないかと考えたのが、住宅地の一つの区画の中にL型のプランの住宅を4件配置するとしたら、どれだけの組み合わせが考えられるだろうかということでした。

これをコンピュータを使わないで人力で解くとしたら、どれほどの解が出てくるかを石垣島の子ども未来大学のワークショップでやってみようと試行錯誤しているところです。より少ない要素の組み合わせで、多数の解があることを体験してもらおうというわけです。本来なら大学のレベルでやり、その解を導き出すプロセスのアルゴリズムを考えさせて、これをコンピュータで解くというものです。それを遊び感覚で子どもたちにも体験してもらおうと思っています。

これは夏のワークショップの課題なので、これからじっくり手順や道具などを考えようと思っています。


2017年2月20日月曜日

ロゴを作ってみた

石垣島で新しく展開しようとしている「石垣島子ども未来大学」、つまり未来を担う子どもたちにクリエイティブな場を提供しようという試みなのですが、そのロゴを考えていたら、ちょっと面白い発見があって一人で嬉しくなりました。

この、キッズユニバーシティは、英語表記で「Ishigaki Creative Kids University」としたので、その頭文字をとって、ICKUの4つのアルファベットでロゴを構成しようと思ったわけです。そこでKeynoteアプリでテキスト入力をして、その文字全体の枠をどんどん狭めていったら、次々に4つのアルファベットの構成が縦方向に並び始めたのですが、これがそのままロゴとして使えるではありませんか。

文字と色のイメージが同じなので、使う場面に応じて横タイプだったり、四角だったり、縦に並んだタイプだったり、自由に使い分けができるし、何よりこれがjpegのイメージではなくてテキストだというところが手軽で、大きさもフォントサイズを変えるだけで可能なのです。画像のようにその度にドット数を合わせたり位置合わせをする苦労もなく自在に選択できる自由度があることを今更発見したということでメモしました。


記号?マーク?サイン?



段ボール箱に描かれている注意書きには、日本語で「取扱注意」や「水濡れ注意」と示されているものもありますが、これでは日本語のわかる人にしか通じない注意だなと思っていましたが、配送会社の段ボール箱には「絵」によって取り扱いにあたっての注意事項が示されるようになりました。

実は、今週末に第一回を開催する予定の石垣島子ども未来大学の最初のワークショップの課題のテーマが、テキスト(1次元)を絵(2次元)にするというものなのですが、その内容を考えているうちに、この段ボール箱に行き着いたわけです。

さて、この段ボールに描かれた記号のことをなんと呼ぶのかがわからなくて、随分検索しているうちに、どうやら「ケアマーク」と一般に呼ばれていることがわかりました。アイコンとは違うのかなとか、サインの一種ではないのかとか、いろいろ思い巡らせたのですが、どうやらこれはマークのようです。では一体、これらの表現の違いは何なのかはっきりした定義はないようなのですが、どなたか、分かりますか?

ちなみに、C.S. パースという記号学者は記号をicon/index/symbolの三つに分類しているようです。


2017年2月18日土曜日

時間をおいてみる

「空間における人間の行動特性の研究」が、私の早稲田大学での半世紀の研究テーマでした。卒業論文で遊園地における観客の行動を追跡したのが最初のアプローチでした。当時の研究室のキャッチフレーズは「人間−空間系の研究」という名称でしたが、実は研究を始めた当初から「時間」も重要な要素でした。この3つの「間」を通して人間の暮らしや行動を見ていくことを念頭に研究を進めて来たわけですが、実は、この「時間」に必ず着目して調査分析をして来たことが、我々の研究グループの最大の特徴となっています。

人間の生活の履歴という比較的長いスパンもそうですが、ほんの少し前にどこにいたのかそしてちょっと先にはどこで何をしているのかを予測すること、それを科学的に説明できるようにして来た研究が、学会でも評価されて、その成果は群衆が集まる博覧会場の観客動線計画や不特定多数が集まる施設からの避難計画などに生かされてきました。

そのせいか、日常でも何かを観察したり、ものを判断するのに時間的な要素が気になります。日・月による変化や季節による特性の変化には特に興味があって、生き物の誕生から土に還るまでの全てのプロセスに関心があるのです。

今日は、その一つを発見して嬉しくなりました。前回、今年のお正月に家の近くで見つけたリュウキュウツチトリモチという、キノコのような寄生植物です。これまでもピンク色の可愛い丸い帽子のような姿は何度か見たことがあるのですが、これがこのあと一体どんな姿になるのだろうかにとても興味があったのですが、今回初めてその姿を見ることができました。例えば、雄花の花被は四枚で、成熟後に反り返るなどです。(写真右側が一ヶ月前の同じ場所で撮影)

物事は、ある一瞬の事象だけではなくて、時間をおいて見ることで、初めて全容がわかるというのは、この生き物の成長だけではなくて、社会現象の全てに言えることではないでしょうか?

2017年2月17日金曜日

循環


昨年の秋に、浜松の実家に生えていた杉苔?のようなものを持ち帰って、ガラス瓶に入れ密閉してそのまま放置しておいたのですが、当時与えた水分だけで、未だに緑色の新しい芽が出たり、ガラス瓶の内側には水滴がついていたりします。空気の入れ替えも水分補給もしないのに、この小さな宇宙の中で命がつながっているのかと思うとちょっと感激です。正月に一ヶ月ほど日光の当たらない室内に置いていたらかなり茶色く変色してしまったのですが、その後、日中は窓辺の太陽の当たるところに置いてみたら、見事に再生しました。水分と酸素と二酸化炭素がうまく循環しているのでしょうか?このガラスのシリンダーに入った「苔」の宇宙を空間デザインの中にうまく取り込めないものでしょうか?

2017年2月16日木曜日

大学入学試験


今日は早稲田大学の理工系学部の入学試験日です。10年ほど前から、従来の理工学部は、基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部の3つに再編されましたが、入学試験は共通の出題で今日行われます。早稲田大学の全学部の入学志願者は114,983人ですが、募集人員は5550人なので約20倍の競争率です。

建築学科は創造理工学部に属していますが、募集人員80名に対して今年は1014名の志願者があり12.7倍の競争率となりました。建築学科だけは今日の一般入試試験の他に明日「空間表現」という実技試験があって、この点数が加算されて合否が判定されます。建築学科の定員は160人ですが、半分の80人はすでに各種推薦入学で合格者が決定しています。この中にはAO入試も含まれています。

何十年もこの入学試験会場で終日監督をしながら思うことですが、答えが一つしかない受験勉強をしなくては大学には入れないという制度そのものの見直しがどうして進まないのだろうということです。社会に出れば、問題の解は無数にあって、あるいはそれまでにない答えを自分で作り出していかなくてはならないのに、単に入学者をふるいにかけるためだけの受験勉強を強いられることへの疑問がいつもあります。幸い建築学科だけが実施している創成入試つまりAO入試の制度を積極的に活用すべきだと思うのです。

AO入試の長所短所はありますが、少なくとも建築学科での成績や卒業後の活躍を見ていると、明らかな成果が生まれています。志願者全員を一人一人を面接するのは大変ですが、ほとんど何もしないで一日中試験会場で歩き回って試験監督をしているよりは、ずっと前向きな対応だと思います。

大学の意識改革を提言しても何も変えることができなかったので、逆に子供達が小さいうちに「答えは一つではない」をワークショップを通して実践しようというのが、石垣島の子供大学です。一つ一つできるところから手をつけていこうと思います。

2017年2月15日水曜日

SNSのトレンドは?


フェイスブックに代わる新しいSNSをいろいろ探っているのですが、どうにもヒットアプリがありません。そこでJK(女子高生)に聞いてみたら、なんとsnapchatだというではありませんか?

なぜとの問いに「フェイスブックは親とも繋がっているので変な画像は投稿できないけど、snapchatなら設定した閲覧時間を過ぎると消えてしまうから、その場でお友達と盛り上がれる」のだそうです。そのために静止画にも動画にも色々なフィルターが用意されていて楽しめるようです。まだお相手がいないので私が自分では試せませんが、世間の余計なことを考えずに「いま」を楽しむというのもありかな、、、。

でも、このスマートフォン専用の画像共有アプリは10代から20代を中心にユーザーが増えており、ちょっと見逃せないSNSになるかもしれません。現在は、生まれたばかりでまだまだ問題もあるアプリですが、今後の動きを見守りたいと思います。

公式サイト
https://www.snapchat.com/l/ja-jp/download

2017年2月14日火曜日

産霊(むすひ)



昨年の大ヒット映画「君の名は。」でも核となっている「むすび」あるいは「むすひ」は、神道における観念で、産霊の字が宛られるように万物を産み成長させる神秘的で霊妙な力を表しているのだそうです。

古事記では、高天原に最初に現れた天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)に次いで、高御産巣日神(タカミムスビノカミ)が登場し、三番目に神産巣日神(カミムスビノカミ)が生まれたとされています。日本書紀では神皇産霊尊と表記される三番目の神様だけが女性であり、一般には男女の仲をとりもつ縁結びの神と言われています。

諸説あるようですが、ゆるく理解するととても面白い世界です。このように、神社と結びとは深い関係にあって、お守り袋などに見られるように、物の結び目にも神が宿ると捉えられているようです。その「結び目」にとてもたくさんの種類と意味が込められていることを知って、自分でも実際に結んでみようというわけで、今回は「二重に願い事が叶う」と言われている二重叶結びに挑戦しました。

こま結びと蝶々結びしか知らなかった私にとっては未知の世界です。表から見ると口の字に裏から見ると十文字に見えるところから「叶」結びという名前になったようですが、他のことを忘れてひたすら結ぶプロセスに集中できることが素晴らしいと思いました。この「結び」の観念を空間の繋がりや人の出会いの場のデザインに積極的に導入することで日本独特の神が宿る空間設計ができるのではないかと思いました。

2017年2月13日月曜日

音の不思議

昨日のランチは、子供づれでもOKというカフェに行きました。そこで久しぶりに空間と音について改めて考えさせられました。

ドップラー効果

大通りを通り抜ける救急車のサイレンの音が近づくにつれて高くなり、そして通り過ぎた後に低くなるのを久しぶりに体感しました。新宿の我が家は大通りから奥まっていて大通りの喧騒は全く聞こえないし、石垣島では車がサイレンを鳴らして走るのに遭遇することはまずないからです。音源が動くということが空間デザインではどのよう生活に取り込まれるのだろう?

カクテルパーティー効果

卒業生と二人でランチしていると、周りはかなりの人々の会話の声があり、このカフェではそれに加えて子供達の歓声や赤ちゃんの泣き声があるにもかかわらず、終始あまり気にならなかった。それでも卒業生の会話が聞き辛くて何度も聞き返したりしていたのだけれど、接近して隣り合ったテーブルのお客さんが話していたことにはほとんど気がつかなかった。自分に関連する情報に対しては鋭く注意が向けられるこの効果があることを、これも空間デザインでどう向き合ったら良いのだろう?

マスキング効果

少し前に知ったばかりのこの効果を昨日も体感した。店の前の道路を車が通った時にそれまでしていた会話が全く聞こえなくなる現象がこれなんだとわかった。2つの音がなっている時に片方の音でもう一つの音がかき消されるこの効果は、空間の音デザインではもっと導入されても良いと思う。ししおどしの音が却って静寂を生むということもありそうだ。

他にも、
ハース効果
近接効果
共振効果
などいろいろあるようですが、いずれにしてもこれまでの建築空間では、音に関しては「騒音」対策がメインで、コンサートホールなど音響設計では技術的な研究の蓄積はありますが、日常音をどのように生活の中で取り入れるあるいは制御したら良いかについては、ほとんど考えられていないのが現状です。しかし、これからのスマートライフの目標の一つである「聴覚」に対してITを含めたデザイン思考が大切になってくるのではないでしょうか?

2017年2月12日日曜日

7年ぶりの投稿

最後にこのブログに投稿したのは、家内が亡くなる前の年、フェイスブックが市民権を持ち始め、次第にそちらに移行していった時期に当たる。mixiもtwitterも止めてフェイスブックだけに絞って情報発信をしてから7年にもなることに実は驚いている。その後のITの進歩や情報技術の発達によって、もっと新しいタイプのSNSが現れると思っていたのに、一向にその気配はない。フェイスブックにはそれなりの利点や使い勝手があるものの、唯一の欠点は検索ができないこと。フェイスブックの思想からすれば、確かに「いま」の繋がりに主眼が置かれているから、すでに投稿済みの記事はどんどん後ろに流されて隠れてしまう。しかし、あの時の記事と比較したい、あるいは以前投稿した時にアップした画像をもう一度見たいとなると、膨大な時間をかけて記事を遡らなくてはならない。私のフェイスブックへの投稿は、6年前に亡くなった家内へ日常のたわいない報告を一つはしようということだったので、少なくても一年に365は投稿することになる。でも1日に二度三度と出すこともあるから、平均すると一年に500件の投稿になる。この中から「あの記事が見たい」と思って探すのは至難の技ということになる。その点、ブログにはカテゴリー分けや、タグをつけられるので、投稿の時にキーワードをつけておけば容易に検索することができる。ブログの形式はもう古いと思った7年前と違って、最近は随分進化したりオプションも増えているので、フェイスブックと並行して、少しブログの使い勝手を試してみようと思っている。どんな反応があるのかを確かめながら、今後の展開を考えていこうと思う。多分、この投稿以前、つまり7年前とは全く違うスタイルの内容になるのではという予想だが、何か工夫できないか試行してみようと思っている。

さて、画像の投稿はどんな感じになるのか、その辺から試してみよう。

早稲田大学西早稲田キャンパスに咲く紅梅