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2017年5月29日月曜日

船越屋ハーリー忘備録

石垣島の北部にある伊原間は、島がくびれていて200mの幅しかありません。漁師が海に出るときに東風の時にはサバニ船を担いて西側の港まで、西風の時には逆に東側に船を担いで移動したことから「船越」という地名がつけられたのだそうです。その海岸に番屋が建てられそれらを含めてフナクヤー(船越屋)と言い、それがフナクヤーハーリーの海神祭の名前となりました。




海神祭はまず太平洋に当たる東海岸で御願ハーリーで海の安全と豊漁を祈願するところから始まります。



その後、陸揚げされたサバニを丸太に縛ってみんなで担ぎ、200mの幅を移動することになります。子供用のサバニも幼稚園児たちが担いで一緒に移動です。


西側にある伊原間漁港に着いたところで、中学生や一般、そして地区ごとの対抗レースが始まります。フナクヤーハーリーが他の各地と明らかに違うのが、この船越のプロセスがあることと、中学生や一般の方の体験乗船ができることのような気がします。




 今回の伊原間でのハーリーは、大人の競技よりも子どもたちが生き生きと参加している姿に感銘しました。「地域ぐるみで子どもを育てる」ことが日々の暮らしの中で行われていることを実感した今日の海神祭でした。







2017年4月28日金曜日

折り紙建築

故・茶谷正洋先生が東京工業大学の教授をされていた時に考案された「折り紙建築」は、当時、私が早稲田大学の建築図法の授業を担当していた時に取り入れたい課題の一つでした。カリキュラムの改訂のために実現はできませんでしたが、ずっと憧れていたところ江副育英会の奨学金の審査員を頼まれた時に一緒に審査を担当されていたのが茶谷先生でした。

10年ほど毎年審査会でお目にかかっていたのですが、ある時、「渡辺くん、こんなものを作ったからあげるよ」と言われてくださったのが、先生の直筆のサイン入りの折り紙建築で作った「横浜クイーンズタワー」とお台場の「フジテレビ社屋」でした。その後、私が大学を退職する時まで研究室の机の前に展示してありました。

横浜クイーンズタワー
フジテレビ

石垣子ども未来大学の課題を考えていた時に、真っ先にやってみたかったのが、この折り紙建築です。茶谷先生がこれを思いついたきっかけは年賀状の版画に飽きて、何か面白いことができないかと考えていた時に、賀正の「賀」の漢字をポップアップカード形式で立体的に作って写真に撮り、それを年賀状にしたところ評判が良かったので、それを建築物でやってみたらどうだろうというのが最初だったようです。

茶谷先生の直筆サイン


紙を「きる」そして「おる」ということの意味やプロセスを再現するために、私も一から始めてみました。たった一枚の平面の紙から無限の立体が生成できることを再認識し、キッズユニバーシティの一番の狙いである「自分で作って感動すること」には最も適した課題になると確信しました。平面図と立面図が一枚の紙に同時に存在し、さらに現実の建築空間をいかに抽象化してそれらしく見せるかという空間認識や空間把握がしっかり身につくような気がします。

一枚の紙から立体建築へ

さらに、ひたすら細かい線を切る、あるいは紙を線に沿って半分の厚さだけ切るという作業が、集中力や持続力を鍛えることができるし、折るという作業が指をバランスよく動かす必要があるので、子供だけではなくて高齢者にこそ楽しく指先と脳を鍛える訓練になるのではないかと思います。

たくさんの建築パーツに部材を分けて切り離し、それをボンドで貼りつけながら全体を作っていくという建築模型の作り方とは全く違う発想で、平面と立体との間を行き来できる「折り紙建築」は、無限の可能性があるような気がしています。茶谷先生から託された課題を、いま島の子どもたちと共有できることを感謝しています。

2017年3月19日日曜日

切る・折る

キッズユニバーシティのプログラムは、最初は「文字」つまりテキストという1次元の世界におけるクリエイティブを課題にしてきましたが、次回からは「点から線へそして面」へと思考を広げていこうと思っています。

そこで、まず「紙」を素材として、その「かたち」にどのような意味が込められているのかを実際に紙に触り、切り、折ることで実感することをテーマにします。日本の「折り紙」は今では世界中で「origami」として認知されているように、そこには形を作る無限の可能性が秘められています。

次回は、まず古典的な日本の正方形の折り紙からはじめ、折り鶴のような基礎的な折り方を再確認し、折って畳むことによって「面」が多様に変化することをみんなで確かめようと思います。宇宙で広げるパネルやアンテナに応用されている「面をたたむ」を実践します。

その時に、正方形の持っている形の特性、特に日本の美の中でそれがいかに大切に扱われ、その対角線が√2であること、それが西洋の動的な美しさと言われている黄金比ではなくて、日本の静的な美を形作った白銀比であることを実例から確かめるワークショップも行おうと思っています。それが、日本のハガキのサイズであり、またA4の紙のサイズが白銀比で正方形が元になっていることを手を動かすことで気づいてもらう課題を考えました。

その上で、「面」という2次元の世界は、面を切ったり、折ったり、組み合わせることで3次元の立体的な空間を形づくる課題作りに挑戦しています。まずはオランダのペーパーデザイナーであるPeter Dahmenさんの作品をトレースすることから始めますが、これを子どもたちが作業できる形にどのように持っていくか思案しています。


実際にこのデザインを自分で作ってみると、3次元の空間を構成した部材を全て平面状に展開すると無駄のない合理的な平面に置き換えることができることを知って、2次元から3次元の世界にあるいはその逆の形を作る発想が、これからの省資源でサスティナブルな空間づくりのヒントがたくさん含まれていることを実感しました。

このキッズユニバーシティでも最終的には、茶谷先生の「折り紙建築」をみんなで作ってみるところまで行きたいなぁと思っていますが、4月まで一ヶ月いろいろ試行してみます。


2017年3月11日土曜日

香りの記号学

在職中から空間と「五感」の関係は大きな研究テーマでした。視覚的なアプローチが多き建築計画学の中で、それ以外の感覚、つまり味覚、嗅覚、聴覚、触覚と建築空間あるいは生活との関係を明らかにしたい、さらにそこから得られた成果を空間デザインに反映したいというのが一つの研究テーマでした。

人間が本来持っている「感覚」に頼らなくても暮らすことができる新しい技術の開発あるいはサービスによって、便利さや効率は良くなったものの暮らしの質という点からは失われたものも多いのではないかと、いろいろな試行錯誤を行なって卒業論文などでその糸口も見つかりましたが、まだまだ十分ではなく退職後もなんとかそれを実践できないか探っていました。

石垣島でのキッズユニバーシティを構想する中で、子どもたちとのワークショップを通してそれが実現できないかと考え模索していたところ、いろいろな人との出会いの中から少し先が見えてきました。そして、五感の中でも「嗅覚」についての世界的なアーティストが石垣島におられることを紹介していただき、今日、お会いすることができました。

お話を伺った直後から、「香り」そのものではなくて、人間がそれとどのように出会い、それを理解し、自分の記憶と照らし合わせながら記憶するかというプロセスが大切であることを説明していただき、それをずっと追い求めて実践されている姿に感動しました。その中で象徴的だったのが「香りの記号化」ということで、人間の情報処理の一つとして「香り」や「匂い」を取り上げることで、それが空間とも結びつき、アートとして表現できることが可能であることを教えていただきました。

香りによる人間の行動誘導は私の在職中から求めていたものでしたが、すでにそれをインスタレーションとして実践されていて大きなヒントを得ることができました。これを今後のキッズユニバーシティのワークショップとして実践するためのいくつかのアイディアが次々と湧いてきましたが、これを機会あるごとにディスカッションして、いつか課題として展開してみたいと思っています。

久しぶりに頭の中を衝撃的な光が飛び交ったような素敵な一日でした。いずれこのブログで嗅覚アーティストである上田さんの考えから学んだことを紹介していきたいと思っています。

2017年3月6日月曜日

もう一度開催

キッズユニバーシティの第一回目のワークショップを開催した直後に、私も参加したかったとのリクエストがたくさんあったので、昨日もう一度開催することになりました。テーマは同じく「脳をたがやす」ということで、やはりブレーンストーミングで頭を柔らかくするというワークショップでした。

昨日は中高校生が主でしたが、お母様とスタッフも加わってちょっと大人な雰囲気の8名でスタート。しかもNeiギャラリーのお二人も参観に来てくださり、和気藹々と進めることができました。




この日のブレーンストーミングの課題は、3月5日の「珊瑚の日」に合わせて、現在石垣島で深刻な問題になっている白化現象を取り上げ、「サンゴの白化を食い止めるには?」のアイディアをできるだけたくさん書き出すというものでした。

サンゴの白化現象の原因が地球温暖化だと気象のせいにする風潮が多い中で、やはり身近にこの問題に触れている子どもたちは、その原因の一つに海への赤土の流出やゴミの廃棄といった人間側の要因があることをしっかりグルーピングできていることに関心しました。さらにマイナスを指摘するだけではなくて現代の科学技術を使って、適切な台風を発生させて海水を攪拌して海水温を下げることや汚染や温暖化に強い種の開発や再生技術の導入などプラス思考のまとめができているなど、ブレーンストーミングによる成果がいくつも得られたことは大きな成果だったと思います。

でも、みんな昨日が「サンゴの日」だから、この出題だって知っていたのかなぁ?

その後は、前回の「重い」の反対語の「軽い」をブレーンストーミングして、そのグルーピングの中から一番お気に入りの内容を「絵」や「アイコン」で表現するという言語をイメージ化する課題に取り組み、これもびっくりするようなアイディアが飛び出して、このワークショップの意義を感じることができた一日でした。次回は、4月下旬ですね。



しかも昨日は、将来は石垣島出身のご主人と一緒に島に戻って、やはりワークショップなど教育関係のお仕事をされたいという女性との出会いもあって、できればこのキッズユニバーシティや同時に進めている「しまのようちえん」プロジェクトなどで一緒に活動できたらいいねということになり、さらに素敵な課題の実現のためのアドバイスもいただき、ますます今後の展開が楽しみになって来ました。