2009年12月2日水曜日

空間ロボットのお手本

ロボットの定義とは、などと難しいことを言わなければ、ロボットの概念は、いまや「自動人形」の域を超えて、自立型の多様な装置の総称として捉えることもできる。建築学においては、建設ロボットのように生産製造プロセス支援のシステムとして、この言葉が使われることが多いが、人間の暮らしを自立的に助けるあるいは暮らしを豊かにする環境装置と見なせば、いま、忘れられようとしている多くの日本古来の空間演出を再評価することができるのではないだろうか。

自然のエネルギーを利用した日本古来の空間型ロボットとして、まず最初に取り上げたいのが「ししおどし」である。農作物に被害を与える鳥獣を威嚇し、追い払うために設けられる装置全般の総称が、ししおどしであるとすれば、詩仙堂のいわゆる「ししおどし」に代表される竹筒を利用したものの他にも、「かかし」や「鳴子」もその一種である。

場所の移動はできないまでも、竹筒にプログラムされた記録によって、自立的に水のエネルギーを「音」のエネルギーに繰り返し変換し、人々の生活を豊かにする空間装置として、この「ししおどし」は鉄腕アトムとともに日本が誇る最高の空間ロボットであると思う。


2000ピクセル以上のフリー写真素材集より



また、水を入力源とした産業用空間ロボットの古典としては、「水車」があげられる。自立型といえるかどうか、その仕組みをもう少し調べてみないといけないが、水量の変化という外部要因に対して、どのように制御しているのか興味深い。

次に、ししおどしのように水のエネルギーではなく、風のエネルギーを利用して、それを「音」に変換する空間装置の代表が「風鈴」であり、これも見方によっては立派な空間ロボットであると言える。

いずれにしても「ししおどし」や「風鈴」のように、人の暮らしの近くで建築の外部空間と内部空間を、視覚以外の感覚でつなぐ大切な空間装置を、現代の生活では忘れかけている。それを、あたらしく「情報」という概念でどのように補うことができるかが、いま研究室に求められている課題の一つである。



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